外国の方が日本に来て求める体験は、大きく分けて「日本らしい一風変わったもの」、「食」、「観光」、「ディープな魅力」の4つに分類されます。「水止舞」は約680年の歴史を持つ地域のお祭りであり、より日本についての理解が深まる「ディープな魅力」のカテゴリーに入ります。

水止舞はその名の通り「水を止めるための舞」であり、その起源は1321年に遡ります。現在の大田区にある大森町地域が大干ばつに見舞われた際、その地域のお寺・厳正寺の住職は雨が降るように祈祷をしたのですが、今度は2年後に雨が降りすぎてしまい、水害が起こってしまいました。水害の原因は雨降りの祈祷だと考えた地域の人々が、毎年雨が止むように祈祷したのが水止舞の始まりとされています。

このお祭りでは、地元の方との一体感を感じることができます。甲高く、印象的な笛の音でお祭りが始まり、近隣の中学校の門の近くに2匹の「龍神」が現れます。龍神を表すのは、2人の白い衣装を着た男性で、藁で編まれた大きな縄に、繭のように包まれています。龍神は周りの人達に運ばれ、2メートル毎に水をかけられますので、見物している人もびしょびしょになります。龍神はそれに応えるように法螺貝を吹き、喜びを表します。参加した子供達も走り回ったり、水に濡れて楽しんでいました。

龍神の後ろでは、白い帽子をかぶりお揃いの半纏を着た小学生以下の子供たちが男女で並びます。左手には紫の扇子、右手には竹の杖を持って、地面を突きます。行列の後方には演奏者が並びます。そのうち、白い着物を着た2人の若い女性が、頭の上に花のバスケットを身に着け、そこから顔を隠すように垂れ下がった赤いカーテンで身元を隠しています。さらに 半纏を着ている3人の男性奏者も、黒い羽毛の獅子の頭飾りに吊るされた筒状のカーテンで、姿を隠しています。

厳正寺の門をくぐると、線香の香りが漂います。境内に建てられた舞台の上に龍神が運ばれますが、身を解かれてしまうため、抵抗します。舞台上で頭飾りを付けていた人たちが参加しますが、この時点で龍が獅子へと変身するとされています。ここで水止舞が始まります。隣にいたお父さんが娘さんに「子供の頃に見た時と全く同じだ」と言っていました。

水止舞は全6部に分かれていて、最初に雌獅子が舞を披露します。次に大きい獅子と若い獅子が初めて出会う場面があり、第3部では3匹が仲良く一緒に踊ります。第4部では「コホホーンの舞」、第5部では2匹の雄獅子が雌獅子を奪い合う舞を披露し、最後に再び3匹が一緒に舞います。数百年の歴史の中で、舞の細かい部分の意味合いは失われつつあるそうですが、儀式の奥深さと重みは地元の方や見物客にも伝わっています。今も残る、古き良き日本の一部を垣間見ることができるかも知れません。

アクセス

JR京浜東北線「大森」駅東口から、京急バス森が﨑行き、大森東五丁目行き、あるいは羽田車庫行きで「大森警察」バス停下車、徒歩約5分。

詳細情報

  • 厳正寺(大森東3-7-27)
  • 日時:2018年7月14日 13:00~15:00